ワインが人気です。どこへ行ってもワイン、ワイン…。私、そんなに詳しくないんですけど…

値段は気にしなくていいから!
そう言われて、自信を持って選んだワイン!です。とは言えないワインに関してずぶの素人添乗員トシコです。
料理とワインとリストを見比べながら、名前に頼るしか方法を知らない私はモエだのシャブリだのオーパスだの浅ーい知識を結集してチョイス。返ってきた言葉は

高すぎる!

もう一度最初から選びなおし。
お店にいるならスタッフに頼めるけど、バンケットの飲み物って事前オーダーってところが多いですよね。
だからワインリストを見て注文するしかない。頑張って選んで「これでどうだっ!」とお願いすると

そのワインは、在庫がありません!
とか平気で言ってくるよね。あるあるだと思います。
私思うにアジアでのワイン選びは、ヨーロッパ以上にむずかしい。
産地でもないから選択肢が少なく、店のスタッフに聞いても頼りにならないことも多い。
しかもゲストには「何かいいものを」と期待される。
そんな現場を何度もくぐり抜けてきた?経験から、国別のワイン事情と選び方のコツをまとめました。
ワインのプロでない添乗員でも使える、実践的な内容です。
ワインが難しい国でぶつかる「3つの壁」
東南アジアや中国でワインを選ぶとき、つまずきやすいのは次の3つ。
① 産地ではないから選択肢が少ない
ヨーロッパなら地元ワインを頼めば大体外れない。でも東南アジアはほとんどが輸入ワインで、ラインナップが偏っていたり、保管状態にムラがあったりします。
② スタッフのおすすめが当てにならないことがある
後ほど詳しく書きますが、特にタイでは「現地の方がおいしいと思うワイン」と「日本人がおいしいと思うワイン」が大きくずれることがあります。
③ 価格の基準がわからない
日本で1500円のワインがシンガポールで4000円、ということが普通に起きます。「高すぎる」と言われた経験がある人には、この感覚のずれが原因であることが多いです。
この3つを知っておくだけで、現場での判断がぐっと楽になります。
バンコクの洗礼——お店のおすすめに従ったら総すかん
正直に書きます。バンコクで盛大に失敗しました。
そこそこ高級なホテルのバンケット。
お店のスタッフが「これがおすすめです」と自信満々に勧めてくれたワインを素直に頼んだら、ゲスト全員から「これは……」という顔をされました。

甘い。というかなんというか…
決してお金をケチったわけではない!タイのローカルワインを選んだわけでもない。
その時は謝って違うワインをすぐに準備したけれど、最初に「まずい」ってなった印象をぬぐい去ることは良いではありませんでした。
今思えば、問題はタイの人たちの味覚との違いです。
タイ料理を食べたことがある方はご存知の通り、タイの食文化には「甘さ」が深く根ざしています。
タイのレストランには砂糖・唐辛子・酢・ナンプラーの4点セットが必ず置いてあり、タイラーメンに砂糖を入れて食べる文化があるほど。
日本人には衝撃的ですが、これがタイの普通です。
タイのローカルワイナリーが造るワインも、フルーティで甘みのあるスタイルが多い傾向があります。

私が選んだワインはタイ産ではなかったけど、やはり甘めのなんかちょっとスパイスっぽい味を好むのかな?
「タイ料理に合う」という観点で選ばれているため、甘い料理には合いますが、日本人の感覚には合わないことも。
これはスタッフが悪いのではなく、味覚の文化的な違いの問題です。
バンコクでのワイン選びのポイント:
お店の人のおすすめは参考程度に。
「ドライ(辛口)なものはありますか?」と確認するか、輸入ワインのリストがあればそちらから選ぶのが安全です。
リストに産地が書いてあれば、フランス・イタリア・スペインなどのヨーロッパ産を優先しましょう。
シンガポール——ワインが高いのには明確な理由がある
シンガポールでワインを頼むと、値段の高さに驚くことがあります。
ゲストに「この国、ワイン高くない?」と聞かれた経験がある添乗員も多いのではないでしょうか。
これにはきちんとした理由があります。
シンガポールはアルコール飲料に物品税(Excise Duty)が課されており、ワインや日本酒などの醸造酒はアルコール純分1リットルあたり88シンガポールドル(約9,000円)。これに消費税(GST)9%が上乗せされます。
アルコール度数14%のワイン1本(750ml)の場合、物品税だけで約9.2シンガポールドル(約1,000円)が価格に含まれています。
さらに、シンガポールは熱帯気候。
輸送コストに加えデリケートなワインを劣化させずに保管するためには、徹底した温度・湿度管理が必要で、その保管コストも価格に反映されます。
日本のセラーよりランニングコストがかかるのは当然のことです。
つまりシンガポールのワインが高いのは「ぼったくり」でも「輸入ワインだから」だけでもなく、国の税制と保管コストの構造的な問題です。
ゲストへの説明の仕方:
「シンガポールはお酒に高い物品税がかかっているので、他の国より割高になります。日本で2000円のワインが4000〜5000円になることもあります。その前提でお選びいただければ」と事前にひとこと伝えると、請求書を見てのトラブルを避けられます。
シンガポールでの選び方としては、「高くて当たり前」を前提に予算を確認し、ハウスワインよりボトルリストのほうが品質が安定していることが多いので、ボトルで頼む場合も最安ではなく下から2〜3番目を選ぶのが基本です。
参考記事:シンガポール ワインがない⁉
中国ワインが変わってきた——長城ワインだけじゃない
ひと昔前の中国ワインといえば、長城ワイン(グレートウォール)など老舗ブランドが定番でした。

長城ワインというだけで「いつの話じゃい?」という突っ込みが聞こえてきそうです。
「まあ飲めるけどね」という印象を持っている方も多いかもしれません。
ところが近年、中国ワインは大きく変わっています。
フランスの最高級ボルドーであるシャトー・ラフィット・ロートシルトが山東省煙台に進出し、LVMHグループ(モエ・エ・シャンドン)が雲南省でプレミアムワインの生産を開始するなど、世界的な大手ワインメーカーが中国でのワイン造りに本腰を入れています。参照:エノテカHP
国際的な醸造技術と中国の産地が組み合わさることで、品質は急速に向上しています。
中でも注目なのが、内陸部の寧夏(ニンシャ)回族自治区。
乾燥した砂漠気候と高標高が良質なブドウを生み、国際ワインコンクールでの受賞実績が増えています。
国内のワイン愛好家人口が急拡大しており、「中国人がボルドーワインを買い占めて価格が高騰した」というエピソードはワイン業界では有名な話です。
中国でのワイン選びのポイント:
以前のイメージで「中国産はちょっと……」と選択肢から外してしまうのは損です。
レストランのワインリストに国産があれば、産地が寧夏・雲南・山東省煙台であれば試してみる価値があります。
むしろ「中国の旅で中国ワインを飲んだ」という体験はゲストにとっても記憶に残るエピソードになりえます。
ベトナム・カンボジア——フランスとのつながりを活かす
ベトナムとカンボジアは、どちらもかつてフランス領インドシナの一部だった歴史を持ちます。
この歴史的背景が、現在のワイン文化にも色濃く残っています。
カンボジア(特にプノンペン)では、フレンチレストランの数が東南アジアの中でも際立って多く、バゲット文化やフランス料理が日常に根付いています。
ワインリストにフランス産が充実しているレストランが多く、スタッフもフランスワインの扱いに慣れていることが多い。
つまり、品揃えも保管状態も他の東南アジア諸国より安定している傾向があります。
ベトナム(ハノイ・ホーチミン)も同様です。
コーヒー・バゲット・フランス料理が根付いており、ワインを扱うレストランではフランス産が中心のリストになっていることが多いですね。
フランス文化への親しみがスタッフにも染み付いているため、ワインの選び方や提供のスキルが他国と比べて高いと感じることがあります。
この両国でのポイントは、ワインリストにフランス産があれば積極的に選ぶこと。
産地がフランスであれば、ある程度の品質と味のバランスが保たれていることが多く、日本人ゲストにとってもなじみやすい味わいです。
そして先日のベトナムツアーの時に言われたのが「ダラットワインが飲みたい!」
北緯10~11度に位置するベトナム最大の街・ホーチミンから北へ約300km。美しい高原地帯「ダラット」で生産されるワイン。名前もそのまま「ダラットワイン」。
TABI LABOから引用
これもツアーでのあるあるだと思うのですが、「探すとない!」
ちゃんといいレストランに行ってるんですよ。ワインリストもちゃんとしています。でも!

ダラットワインありますか?

あ~ないです~
見つけたら飲みましょ。アジアでは「赤も冷やして飲む!」
(だってヨーロッパの常温って20度前後でしょ?35度なんて想定してないもんね)
注意点:
価格や税制は変動することもあり、また高級ホテルのレストランと街中のレストランでは品揃えに大きな差があります。必ずリストを確認してから選びましょう。
アジアのワイン需要は全体的に伸びている
少し視野を広げると、アジア全体でワインの需要が年々高まっています。
若い世代を中心に「ビールよりおしゃれ」という感覚でワインを選ぶ層が増え、タイ・ベトナム・中国では国産ワイン産業も急成長中。(コロナ後に急拡大した需要は、現在やや落ち着きを見せている)

よく中国や台湾で紹興酒を注文すると「日本人しか頼まない」みたいなことを言われます。
あの人たち、ウィスキーかワインです。ビールの次は。
10年前とは別の国のようにワイン環境が変わっている地域もあります。
タイでは、カオヤイ地方を中心にワイナリーが増え、国際的な品評会で受賞するレベルのワインも出てきています。
これらは「タイ料理に合わせる」ことを意識して造られているため、甘みとフルーティさが特徴です。
日本人がそのまま飲むと甘く感じる場合がありますが、スパイシーなタイ料理と合わせると一変することも。
添乗員として東南アジアを訪れる頻度が高い方には、現地のワイン事情のアップデートをしておくことがますます重要になっています。
現場で使える、ソムリエなし、ちょっと高級店での基本の選び方 5選
最後に、国別の事情を知った上で、現場で使える基本の選び方をおさらいします。
① どんな具材(肉・魚)が混ざっていても対応しやすい、アジア料理の救世主はこの3本
アジア料理は、一つの皿に肉・魚・野菜が混ざっていたり、甘・辛・酸・塩の要素が複雑に絡み合っているのが特徴ですよね。
フランス料理のように「肉なら赤、魚なら白」という単純なルールが当てはめにくいのは、その多層的な味付けのせいです。
1.スパークリングワイン(辛口)
泡が口の中をリセットしてくれます。
揚げ物、点心、スパイシーな料理に最適です。
2.ロゼワイン(辛口)
「白と赤の中間」なので、肉と魚が混ざる食卓に一番馴染みます。
チリソースや豆板醤などの赤い調味料と色が合います。
3.リースリング(やや甘口〜辛口)
ドイツなどの白ワインです。
独特の甘みが、唐辛子の辛さを和らげ、魚介の旨味を引き立てます。
② ワインリストの下から2〜3番目を選ぶ
最安値は質が落ちることがある。
でも最高値を勧めるのも違う。
下から2〜3番目は「その店が自信を持って置いている」価格帯で、コスパが最もよいことが多いです。
③ ヨーロッパ産、特にフランス・イタリアを優先する
アジアのレストランで外れにくいのは、やはりフランスやイタリアなどの定番ワイン産地。
慣れ親しんだ産地のワインはスタッフも扱い慣れていて、保管状態も比較的安定しています。
具材ではなく、「味の方向性」で選ぶ、というのも調べたら出てきましたよ。
ハーブ・酸味が効いた料理(タイ・ベトナムなど)
ソーヴィニヨン・ブラン(白ワイン)
パクチー、レモングラス、ライムの香りと、ワインのハーブ香が同調します。
生春巻きや魚介のサラダ(ヤムウンセン)にぴったりです。
スパイシー・濃い味の料理(中華・韓国・エスニック)
ゲヴュルツトラミネール(白ワイン)
ライチのような華やかな香りが、スパイスの香りと喧嘩せず調和します。
シラー / シラーズ(赤ワイン)
黒胡椒のようなスパイシーな香りが、お肉や濃いタレの味をしっかり受け止めます。
醤油・出汁・照り焼き(和食・中華)
ピノ・ノワール(赤ワイン)
赤ワインの中では渋みが少なく、醤油ベースの味付けを邪魔しません。
先日行った中華レストランでは、スペインのシェリー酒の品ぞろえを良くしていました。
確かにほのかに甘いそして複雑なあの味は、中華料理にぴったりと思いました。
中華+シェリー酒、ありだね!
④ ゲストへの提案は2択で出す
「こちらの赤とこちらの白、どちらかお好みでしょうか?」
丸投げされるより、2択の方がゲストは選びやすく、提案力のある添乗員という印象にもなります。
⑤ 「値段は気にしないで」は信用しない
これが一番重要です。
「お任せで」「値段は問題ない」という言葉を鵜呑みにすると、後から「高すぎる」が来ます。(きました)
シンガポールでのアルコール類の値段の高さを知らないとえらい事になってしまいます。
常識の範囲内で!と言われても、「だからこれが難しいんだって」と言いたくなる。
前にTVで小泉元首相は「お料理のコースと同じ値段のワインを注文する」と言うというのをやっていました。
これも参考になりますね。
最後に
ワインのプロになる必要はありません。(なれません)
「国ごとの事情を少し知っている」「基本の選び方を持っている」——それだけで、現場はずっと楽になります。
そして何より、失敗談はさらにワインを美味しくする。(はず)
参考記事:レストラン準備 これも添乗員の仕事です。


コメント