体調不良 への対応【初心者向け・薬を渡せない時代の備え】
体調不良 ツアー中、お客様が体調を崩す——これは添乗員なら誰でも一度は経験する、避けて通れない現場です。
慣れていないうちは「どう声をかければいいのか」「薬を渡していいのか」「病院に連れていくべきか」と、判断に迷うことも多いはず。しかも今は、昔のように「はい、この薬どうぞ」と気軽に渡せる時代ではありません。
この記事では、海外添乗員として実際に現場で体験してきたことをもとに、
- 出発前にやっておくべき準備
- 薬を渡せない時代にどう備えるか
- 症状別の初期対応と声かけの例
- 病院へ連れていくべきサイン
- そして息抜きに読める「世界の民間療法」の話
までをまとめます。明日の現場で使える実務ガイドとして、また読み物としても楽しんでもらえたら嬉しいです。
出発前の準備|体調不良者がでても現場で慌てないために
体調不良対応は、実はツアーが始まる前から始まっています。
現場で慌てないためにも、出発前にこの3つは必ず確認しておきましょう。
1. お客様の持病・アレルギー・常備薬を把握しておく
申込書や事前の面談で、持病・アレルギー・普段飲んでいる薬の有無を確認しておきます。特に持病のある方は、体調を崩したときのリスクが高くなります。
聞き方のコツは、事務的に聞くのではなく「念のため、お薬を飲んでいる方はいらっしゃいますか?」「食物アレルギーはありますか?」と、こちらから自然に声をかけること。
病院で身長や体重を聞かれることもあります。
申込書に書いていても、面談で口に出して確認すると、本人も「聞かれている」と意識してくれます。
常備薬を持っている方なら、いざというときはその薬を本人に使ってもらうのが基本です。
私たちが渡すのではなく、本人の薬を本人が使う。

これ大事!
2. 現地の日本語対応病院・救急番号を調べておく
まずは、渡航先の日本語対応病院と救急番号を、出発前に調べてメモしておきます。
ホテルのフロントで聞くことも大事です。一番近くにある病院や旅行者に行きやすい病院を知っているからです。

体調不良のお客さんに「タクシーで30分移動してください」は言いにくい。
都市によっては日本語対応の医療機関が限られるので、滞在エリアごとに確認しておくのがベストです。
最近はスマホのアプリや保険会社のサポートデスクで、提携病院を案内してくれるサービスもあります。
加入している保険のサポート窓口の番号も、このタイミングでスマホに入れておきましょう。
3. 海外旅行保険の加入有無
ここは声を大にして言いたいのですが、カード付帯の保険に頼らず、通常の海外旅行保険に加入しておいてください。
一番安いプランでいいんです。
カード付帯の保険は条件が複雑で、補償が限られることが多く、いざというときに使えないケースもあります。
「カードで保険が付いてるから大丈夫」と思っていたら、実は対象外だった——そんな話は現場でもよく聞きます。
安心を買う意味でも、一番安いプランでいいので、通常の海外旅行保険に加入しておくことを強くおすすめします。
通常の海外旅行保険なら、キャッシュレス診療が使えるか、補償範囲はどこまでか、を事前に把握しておけます。
お客様にも「保険証書か証券番号を持っていますか?」と確認しておくと、受診のときにスムーズです。
「私のクレカは最強だからクレカの付帯で十分」という人には、付保証明書を持ってきてもらう事も一つのアイデアです。
クレジットカードに付帯する海外旅行傷害保険の加入を証明する書類(付保証明書)
英語でも出してもらえるはずです。
体調不良だと言っているお客さんと保険会社の連絡先を探すのは大変です。

だいたいクレジットカードの裏面に書いてある電話番号にかけると、保険はこの番号へって言われることがほとんどです。
まず大前提|体調不良でも添乗員が薬を渡してはいけない理由
最初にこれだけは押さえてください。添乗員がお客様に薬を渡すのはNGです。
ところで、何年か前に「薬をあげてはいけません!」というお触れが出たのを覚えていますか。
この仕事を始めた頃は、ある程度の市販薬を持っているのが添乗員の常識でした。
正露丸、バファリン、パブロン、絆創膏、酔い止め、大正漢方胃腸薬……。
お客様もちょっと体調不良かな?と思ったら添乗員に「薬を持ってる?」と聞いていた時代でした。
でも今は違います。
薬を渡す行為は、法律上さまざまな問題に引っかかります。
持っているだけでもグレーな扱いになることがあり、渡してしまえば責任問題になりかねません。
だからこそ、私たちは「薬以外のもので備える」方向にシフトする必要があります。
薬以外で「備えておくもの」リスト
では、今は何を準備しているか。私の現場での定番はこちらです。
ここで正直に言っておくと、これらは基本、自分のお金で準備しています。

お客様は「ありがとう」とは言ってくれても、お金をくれる人はまれです(笑)。
それでも備えておくのは、いざというときに動けるようにするため。
これも添乗員の仕事のうちだと思っています。
体調不良・現場での初期対応と声かけ例
ここからが本題です。
一言に体調不良と言っても症状はさまざまです。
症状ごとに、現場でどう動くかを整理します。
ポイントは「見極め→声かけ→対処」の順で考えること。
いきなり対処に入らず、まずお客様の状態をよく見てください。
乗り物酔い

バス移動の多いツアーでは頻出のトラブルです。船に乗らなきゃいけない憂鬱です。
顔色が悪い、口数が減る、生あくびが出る——これらは酔う前兆のサイン。
予防のタイミングも大切です。
前日の睡眠と食事を見直す(重いものやアルコールを控える)、座席は前の方・進行方向を選ぶ、車内での読書やスマホを控える——こうした声かけを、酔ってからではなく酔う前にしておくと効きます。
「明日は移動が長いので、朝は軽めにしておきましょうね」と一言添えるだけで、お客様の意識も変わります。
対処としては、パンを水なしで少し食べる、炭酸水を飲む、ツボを押すなどが知られています。
「レモンを握りしめておく」というのも聞いたことがあります(ニュージーランドで言われた記憶がありますが、正直あまり効いた気はしませんでした)。
さらに見逃せないのが生姜です。
生姜は乗り物酔い・船酔いに効くと昔から言われていて、実際に研究でも「プラセボと比較して嘔気を軽減した」という報告があります。
海外でもジンジャーエールやジンジャーティーが定番なのは、理にかなっているんですね。
参考URL(生姜の効能):国立健康・栄養研究所「『健康食品』の安全性・有効性情報|ショウガ」
現場では「ジンジャーエール、飲めそうですか?」と声をかけるだけでも、お客様の気持ちが楽になることがあります。
ハードルが低くて使いやすいのがいいところです。
あくまで「飲み物として少量」の範囲で、と心得ておきましょう。
酔い止め薬を持っているお客様には「薬があるならそちらを使ってください」と促すのも忘れずに(私たちは薬を渡せません)。
発熱・風邪っぽいとき
まず水分と休息。そして食事です。
日本では風邪といえば「おかゆ」が定番ですが、欧米では「チキンスープ」が定番。
しょうが・ニンニク・玉ねぎ・鶏肉を丸ごと煮込むだけのシンプルなスープで、現地ではよく振る舞われます。

でも海外で料理なんてできないもんね。
やはりフリーズドライ食品が重くなくておススメなんだけど、ポットがないホテルも増えてきてるので悩ましい所です。
これ、よさそう → 養命酒製造 養生シリーズ 五養粥 白
ただ、ここで私が実際にぶつかった壁があります。
最近の若者はおかゆを食べないんです。
何人かに続けて「やだ!」と言われてしまいました。
ゼリーのほうがいいらしい。

診てもらったお医者さんが「ゼリー」がいいかもね。って言ったんだよね。
添乗員なら知ってるかもだけど、海外って意外にもゼリーがない!
えらく遠いジャパンストアまで買いに行った覚えが…
体調不良の生徒に「我慢しなさい」と言えなかった。
時代に追いつかなければ、と実感した出来事です。
お客様の年齢層によって「何なら食べられるか」を変えるのがコツですね。「おかゆとゼリー、どっちがいいですか?」と選択肢を出すと、意外とすんなり決まります。
ちなみに、欧米では「風邪ぐらいでは病院に行かない」のが普通です。
「熱が出たら水風呂」なんて話もありますが、これは日本人は真似しないほうがいいと思います。体質も違いますし、無理は禁物です。
食あたり・消化不良
これも海外では珍しくありません。
私自身、食あたりで病院に行ったことがあります。そのとき現地の病院で言われたのが、
「スプライトを飲みなさい。」
これには驚きましたが、実際そういう指導をする国は多いんです。
ただし実務的には、脱水を防ぐことが本筋です。
経口補水液を少量ずつ頻回に飲む、カフェインやアルコール、乳製品は避ける——こうした基本を押さえておくと安心です。
スプライトの話は現地の知恵として面白いですが、脱水対策としては経口補水液が頼りになります。
消化不良のとき、日本人は消化の良いものを選んで野菜を多めに、と考えがちです。
ところがフランス人は逆で、肉を好むそうです。
理由は「野菜は繊維が多くて腸に良くないから」。
腸の長さが違うなんて話を聞きますが、本当にそうなんだなぁと思った瞬間でした。

体調不良の時に肉…
私には無理だな
各国の常識は、こちらの常識とは限りません。
参考記事:外国の 食事の量 はなぜ多い?日本人が驚くワケをデータで解説
便秘・下痢
ハワイでは「便秘にはパパイヤ、下痢にはグアバ」と言われます。

これは現地の人にとってはごく当たり前の知恵で、スーパーにもパパイヤとグアバが並んでいて、体調に合わせて買っていく姿が見られます。
パパイヤにはパパインというタンパク質分解酵素が含まれていて、これが消化を助けると考えられています。
食物繊維も豊富なので、便秘気味のときの食事として理にかなっているんですね。
逆にグアバは、葉っぱをお茶にして飲む習慣もあり、お腹の調子がゆるいときに現地でよく勧められます。

日本でいえば「梅干し」や「リンゴ」が体調に応じて使い分けられるのに近い感覚かもしれません。
ただし、だからといって全員に勧めていいわけではありません。
パパイヤはアレルギーのある方もいますし、妊婦は青パパイヤを避けるなど諸説あります。
グアバも食べ過ぎはよくない。あくまで「現地の知恵として紹介する」スタンスで、無理に勧めないのが安全です。
現地の知恵を知っておくと、声かけの引き出しが増えます。
はちみつもどこの国でも万能ですね(ただし日本では赤ちゃんにはちみつは禁物。パキスタンでは生まれたばかりの赤ちゃんにはちみつを薄めて口に付けるそうで、大丈夫なの?と聞いたら「どういう意味?」と逆に聞き返されました。国によって常識は本当に違います)。
はちみつの効能:ひまわり医院
免疫強化にもなるからね、体調不良にならないためにもはちみつはおススメ。
これは病院へ|受診が必要なサイン 単なる体調不良ではない
ここは大事なパート。
素人判断で抱え込まないこと。
実は私は、病院での診療を早い段階でおすすめしています。
理由はシンプルで、お医者さんに「大丈夫」って言ってもらいたいからです。
私たちは医療の専門家ではありません。
少しでも「おかしいな」と思ったら、早めに受診して専門家に判断を委ねる。
これがお客様の安心にも、自分自身の安心にもつながります。
以下のようなサインがあれば、迷わず病院へ連れていきましょう。

なぜかやたら病院に行きたがらない人もいますが、やはりお医者さんに診てもらった方が安心です。
なんとなく体調不良 グレーゾーンのとき、どう決めるか
リストに当てはまらないけれど「なんとなく体調不良」——実務ではこのグレーゾーンが一番迷います。
そんなときの自分の判断軸を持っておきましょう。
- 本人の希望を聞く(病院に行きたいか、様子を見たいか)
- 重症感を見る(顔色、話し方、歩き方)
- 現地の医療レベルを考える(安心して受診できる環境か)
- 明日の移動があるか(移動前に受診しておくほうが安全)
迷ったら受診。これが基本です。
現地の医療レベルもそうだけどシステムも知っておくことが重要です。
現金先払いじゃないとみてもらえない中国とかね。
夜間・休日の受診先をどう探すか
昼間なら日本語対応病院に電話できますが、夜間や休日に体調を崩すこともあります。そんなときのために、
- ホテルのフロントに相談する(提携の医療機関を知っていることが多い)
- 保険会社のサポートデスクに電話する(日本語で相談でき、病院を案内してくれる)
- 現地の救急番号にかける(重症なら迷わず)
- ランドオペレーターに連絡
この選択肢を頭に入れておくだけで、夜間でも落ち着いて動けます。
日頃から「どこに相談するか」を決めておくのが、実は一番の備えです。
病院へ行くときの持ち物
病院へ行く際に必ず持っていくのは、海外旅行保険の証書(または証券番号が分かるもの)とパスポートです。
保険証書がなければ診療費の扱いが変わることがありますし、パスポートは本人確認に必要です。
キャッシュレス診療の可否も保険会社によって違うので、証券番号はすぐ出せるようにしておきましょう。
そして必ずしも私たちが医療判断をする必要はないということを忘れないでください。
私たちの役割は「適切に受診につなげること」です。
添乗員の必需品|体温計は筆箱に入れている
まず、受診の判断材料として、私が必ず持ち歩いているのが体温計です。(私は筆箱に入れています。)
体温が分かるだけで、「様子を見るか、病院へ行くか」の判断がぐっとしやすくなります。
体調不良だというお客様に「熱はありますか?」と聞いても「よく分からない」という答えが多いので、その場で測れるのは強い武器です。
同じく筆箱には百合油(ハッカ油のようなもの)も入れています。(台湾で買うやつね)

乗り物酔い、虫刺され、気付け、鼻づまり……と何にでも使えるので、一つあると本当に心強い。
体温計と百合油は、私の現場の「二種の神器」です。
【読み物】添乗員が見てきた世界の民間療法
ここからは少し肩の力を抜いて、読み物として。
現場で出会った「世界の民間療法」の話です。
効くかどうかは別として、現地の知恵を知っておくと、お客様への声かけの引き出しになります。
ただし、真似しないほうがいいものもあるので、そこは線引きしておきますね。
代表的なのはコカ・コーラ。
体調不良なのにコカ・コーラ?と言われそうですが「風邪のときにも、消化不良のときにも、頭痛のときにも」と、けっこうたくさんの国で言われます。
たぶん同じ理由でスプライトも。私自身、食あたりで病院に行ったときにスプライトを勧められたのは、さきほど書いた通りです。
ハーブティーも国によってさまざま。
朝食のティーコーナーに結構な種類が置いてあったりします。
しょうが・ニンニク・玉ねぎ・鶏肉のチキンスープ、オレンジジュースでビタミンC、そして寝る。
これが現地流の風邪対策の基本形です。
乗り物酔い防止では、パン、レモン、炭酸水、ツボ押し、そしてアルコール(!)なんてのもあります。
アルコールとかツボ押しは日本と一緒ですね。
ただしアルコールで酔い止めは真似しないほうがいいと思います(笑)。気分が悪いときに飲むのは逆効果になりかねません。
韓国ドラマでは、消化不良のときに指を糸で巻いて針を刺し、血を出すシーンを見たことがあります。汚血を出して巡りをよくするんだそう。あれは効くのかな? まだ未経験です(笑)。
台湾では「願掛けのためにこれを食べない」と決めている人が多くて興味深いです。

私は昔、占いのおばちゃんに「あなたの運勢は悪いから、これから肉を食べないほうがいい」と言われましたが、肉をガンガン食べて今も健康です(笑)。
まとめ|体調不良には日頃の備えが一番の対策
最後に、この記事のポイントをまとめます。
現場で一番大事なのは、慌てないこと。
そしてもう一つ、添乗員自身の健康も同じくらい大事です。
お客様を支える側が倒れてしまっては元も子もありません。
移動中の食事や睡眠、水分補給は、つい後回しにしがち。
でも自分の体調を整えておくことも、立派な仕事のうちだと思っています。
そのためには日頃の備えがものを言います。この記事が、初心者添乗員の皆さんの安心につながれば嬉しいです。
チェックリスト(持ち物)
- □ 栄養剤
- □ ハッカ油系(百合油など)
- □ 経口補水液
- □ おかゆ・ゼリー・うどん
- □ ビタミン剤
- □ 体温計
- □ 海外旅行保険の証書(または証券番号の控え)
- □ パスポート(コピーも)
- □ 保険・緊急連絡先の控え
- □ 現地の日本語対応病院・救急番号のメモ
- □ 保険会社サポートデスクの連絡先
参考URL
- 国立健康・栄養研究所「『健康食品』の安全性・有効性情報|ショウガ」
https://hfnet.nibiohn.go.jp/contents/detail446.html - 厚生労働省「医薬品の販売・授与に関する規制(医薬品医療機器法)」
https://www.mhlw.go.jp/(※薬を渡せない根拠として参照。最新の法令は必ず確認を)
※本記事は体験と一般的な情報に基づくものであり、医療行為を推奨するものではありません。実際の対応は状況に応じて、また最新の法令・ガイドラインを確認のうえ行ってください。


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