食事の量 何年たってもこの課題は変わらない。残したくないお客さん VS すごい量の外国の食事
「食事の量が多すぎる」
旅行会社の添乗員として働くこと、かれこれ30余年。日本人を海外へ送り出すアウトバウンドも海外の方を日本にお迎えするインバウンドもずっとやっています。
そんな中で、いつも日本のお客さんに言われることがあります。
先日、ハワイ旅行から帰ってきたお客さんたちと話していたら、口をそろえてこう言うんです。

朝ごはんの量、多すぎない…?
さらに、いつも「少なめで、さくっと食べられるところある?」って聞かれるんですけど、正直に答えるとこうなります。

……がっつり系しかないんですよね
前回のブログでは、フィンランド航空の機内食が少なすぎる、と文句を書きました(フィンランド航空の機内食について)。
今回はその真逆、海外の食事の量が「多すぎる」問題について、ちゃんと考えてみたいと思います。
ロコモコ、まさかの量にビビる
ハワイでロコモコを頼んだとき

ご飯の量、目測で1合半くらいはある。
その上にがっつりサイズのハンバーグ、さらに目玉焼きが3個。
美味しいことは美味しいね、もちろん
これ、そもそも「朝食の定番メニュー」だという事実にまずびっくりしますよね。
そしてこの量を朝から普通に食べる、という文化にも二度びっくり。
「これ、本当に1人前ですか?」と二度見してしまうレベルです。
しかも厄介なのは、「簡単なもの」をリクエストされたとき、日本人にとっての「簡単」には「量が少ない」も含まれているということ。
海外では「簡単=早く出てくる/手軽に食べられる」であって、「量が少ない」とはイコールじゃないんですよね。
ここのすれ違いが、旅先での「こんなに食べきれない…」を生んでいる気がします。
実際、どのくらい食べてるの?データで見てみた
「外国人ってほんとにそんなに食べるの?」を数字で確認してみましょう。
FAO(国連食糧農業機関)のデータをもとにした、国別の1人1日あたり供給カロリーを表にまとめてみました。
| 国・地域 | 1人1日あたり供給カロリー | 備考 |
|---|---|---|
| イスラエル | 3,923kcal | 世界1位(2022年) |
| アメリカ | 3,912kcal | 世界2位(2022年) |
| アイルランド | 3,911kcal | 世界3位(2022年) |
| オーストリア | ― | OECD加盟国中で最多水準 |
| ヨーロッパ・北米平均 | 3,540kcal | 世界で最も高い地域平均 |
| アフリカ平均 | 2,600kcal | 世界で最も低い地域平均 |
| 日本 | 2,197kcal | 令和5年度確定値、OECD加盟国中で最少水準 |
こう並べてみると一目瞭然ですよね。
イスラエルやアメリカの3,900kcal台に対して、日本は2,197kcal。
実に1,700kcal以上、率にして半分近い差があります。
ほぼ倍食べてるってことですよね……もはや同じ「食事」というジャンルの競技なのか疑いたくなる差です。
日本はOECD加盟国の中でも供給カロリーがもっとも少ない国のひとつでもあるんですね。
つまり「気のせいじゃなくて、本当にたくさん食べている」というのがデータからも裏付けられるわけです。
しかもアメリカだけの話じゃなくて、ヨーロッパも軒並み日本より食事量が多い、というのがポイントです。
いや、正確に言うとちょっと違うかもしれません。
世界の平均や上位国と比べると、日本がダントツで少ない側にいる。
つまり「海外の量が多い」のではなく、客観的に見れば「日本人が食べなさすぎ」と言ったほうが正解なんじゃないか、というのが数字を見た私の実感です。
じゃあ、なぜ体格差はそこまでないのに量がこんなに違うの?
ここで素朴な疑問が出てきます。
アメリカ人と比べれば体格差を実感しやすいですが、ヨーロッパの人たちって、日本人とそこまで極端に体格が違うわけじゃない印象がありませんか? なのに食事量はけっこう違う。
実はこれ、私自身にも心当たりがあります。
日本にいると「ややデブ」認定されがちな体型なのですが、アメリカに行くと「理想的なプロポーションだね」と真顔で褒められるんです。
同じ体なのに、国が変わるだけでここまで評価が変わるのか、と毎回びっくりします。

もちろんリップサービス込みだという事は理解してますっ!
種明かしをすると、日本人と欧米人では、体の「燃費」がそもそも違うようです。
日本人には脂肪を燃焼しにくくする「倹約遺伝子」を持つ人が欧米人よりずっと多く、たとえばある遺伝子は白人の8%に対し、日本人は34%が持っているという報告もあります(日刊ゲンダイヘルスケア)。
長く穀物中心の食生活を送ってきた日本人の体は、少ないエネルギーでも生きていけるよう「省エネ仕様」になっている、というわけです。
たとえるなら、日本人はもともと燃費のいいコンパクトカー、外国の人たちは馬力重視の大型トラック。
同じ量の「燃料(食事)」を入れても、必要な量も走れる距離もそもそも違う、というイメージです。
「日本の食事、量が少なすぎる」と言われた話
これは実際にインバウンドのお客さんから言われたことなんですが、けっこう衝撃的なリアクションが多いんです。
お好み焼きを1人1枚出したときは、「これはスナックか?」と真顔で聞かれました。
寿司を1人前出したときは「全然足りない」と言われ、慌ててもう2人前を追加したこともあります。
カレーを1皿出したら「これで終わり?」と本気で驚かれましたし、ビールを注文するときは、当たり前のように1人1本ずつ。
シェアするという発想自体がそもそもないんですよね。
極めつけは「魚ばっかりだとお腹が膨れない」という、なんとも切実な訴えでした。
これ、私の実体験だけじゃなくて、ちゃんとしたデータでも裏付けられています。
農林水産省がまとめた訪日外国人旅行者の評価調査では、「思っていた量よりも少ない」という不満が実際に挙がっていて、特にオーストラリア(Australia/オセアニアの国)からの旅行者にその声が多いと指摘されています(農林水産省 資料)。
カゴメの解説記事でも同じ調査を引用し、料理の量への不満はオーストラリアの観光客に多い傾向があるとまとめられています(カゴメ)。
また別の記事では、アメリカでは大盛りが基準サイズになっているため、少量ずつ多品目を楽しむ日本のコース料理には物足りなさを感じる人が多い、と紹介されています(Foobal)。
旅行会社の添乗員さんが「アメリカ人のお客さんに、ほとんど食事ができていないと不評だった」と語っている記事もあり、日本食=上品だけど量が少ない、というイメージは海外ではけっこう共通しているようです(Hint-Pot)。
上に挙げたお好み焼きやビールのエピソードも、実はヨーロッパからのお客さんに言われたものです。
「アメリカは量が多い」というイメージは強いですが、体格がそこまで大きくないように見えるヨーロッパの人たちも、日本より明らかに量を求めてくることが多い。
ここは実際に接客していて、いつも興味深いなと感じるポイントです。
「残したくない」日本人が本当に困っていること
添乗員をしていて、実は一番困るのがここなんです。
日本人のお客さんは、とにかく「残したくない」という気持ちがものすごく強い。
量が多いとわかっていても、出された以上は頑張って完食しようとする方が本当に多いんです。
気持ちはすごくよくわかるんですが、無理して食べきろうとして最後は苦しそうにしているのを見ると、こちらも心配になります。
なので最近は、先回りして対策をお願いすることにしています。
レストランを予約する段階で「お会計は人数分ちゃんとお支払いするので、ハーフポーションにしてもらえませんか」とお願いしたり、大皿から取り分けるスタイルのお店では、お客さんに現地の「少なめで」の一言を覚えて帰ってもらったりしています。

たとえばイタリアなら「ウンポコ(un po’)」。
この一言があるだけで、量を調整するハードルがぐっと下がるんです。
海外での食事、日本人が知っておきたいマナー
続けて、日本人が量の多い海外で食事するときに、知っておくと安心なマナーもまとめておきます。



もちろんステーキのポーターハウスは”そのままをシェアする”で大丈夫。

最後に
「外国の人は本当にそんなに食べるのか?」——30年添乗員をやってきた今の答えはこうです。
海外の量が多いというより、客観的に見れば「日本人が食べなさすぎ」と言ったほうが正解ですね。
とはいえ、「残したくない」という気持ちは、日本人らしい美徳でもあります。
無理に完食を目指さず、ハーフポーションや「ウンポコ」のような現地の一言を味方につけて、次の海外旅行ではもっと気持ちよく食事を楽しんでもらえたら嬉しいです。

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